令和3年12月定例会報告 ~一般質問~

 12 月定例会では、条例制定3件、条例改正5件、補正予算4件を含む計26 議案が審議され、すべて全会一致または賛成多数にて可決となりました。
 一般的に12 月定例会としてはかなり多い議案数と言えますが、大府市独自の条例制定が増えたこと(年度当初の4月1日に施行するため)もその一因であり、本市執行部が政策法務にしっかりと取り組むようになった表れとして、私たち無所属クラブとしても大いに評価しているところです。

 さて、一般質問は今回、適切なワクチンの接種体制や情報発信等を通じた環境整備について、執行部の見解を尋ねました。
 質問項目は下記のとおりです。


1.予防可能な疾病から市民の命と健康を守る適切な予防接種の実施体制及び環境整備について
(1)HPVワクチンの積極的勧奨の再開について
①来年度の予算編成時期を踏まえ、本市では今後の対応をどう展開していく考えか
②8年にわたる積極的勧奨の中止によって接種機会を逃してしまった市民への対応をどのように考えているか
③正確な情報を対象者本人や保護者に周知する上での学校の役割をどのように考えているか
(2)抗体保有率が低い世代の男性に対する風疹の抗体検査及びワクチン接種に関する啓発の成果と課題はどうか
(3)感染症及びワクチンに関するデマや陰謀論に惑わされないための対処をどう考えるか


 厚生労働省の専門家部会で、有効性と安全性に関する最新データや、接種後に症状が出た人への医療提供体制の現状等を踏まえた議論が行われた結果、HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)の積極的勧奨の中止を終了することが、全会一致で決定されました。これを受けて同省では、令和4年度からの積極的勧奨再開を正式決定するとともに、中止期間中に接種機会を逃してしまった女性にも無料接種を行う方針を合わせて示しています。
 一方、接種を推進する医師の団体が昨年8月、HPVワクチン未接種の高校1年女子に行ったアンケートでは、「接種したい」と「接種したいと思わない」が約3割ずつと拮抗し、未接種の高校1年女子を持つ親ではそれぞれ13%、51%と、抵抗感は親の方が強いことが分かりました。
 マスコミ報道の影響も大きかったことは想像に難くなく、不安な思いを抱くご本人や親御さんのお気持ちを責めることはできません。だからこそ今後は、HPVワクチンの接種そのものの大切さだけでなく、万が一の際の医療提供体制に関する知識や、最新の科学的知見に基づく正確な情報も合わせて広めていくことが、現時点での対象者のみならず、これから対象年齢となる皆さんにも安心して接種を受けていただくうえで不可欠な視点ではないかと考え、これからの市としての対応について尋ねました。

 健康未来部担当部長からは、国の方針に沿って対応を進めていく旨の基本的な考え方が答弁された一方で、効果的な周知に関する具体的な方策についての再質問に対しては、国が作成するリーフレットの活用に加え、保護者の方にも一緒に読んでいただくなど、家庭内で話し合ってもらえる機会を作れるよう、啓発の方法を工夫したいとの考えが示されました。

 また、風疹ワクチンについても質問を行いました。ほとんどの人はかかっても軽症で治るとされている風疹ですが、妊娠中の女性が感染すると新生児に先天性風疹症候群の障がいが生じる可能性があるため、ワクチン接種が推奨されています。特に、昭和37年度から昭和53年度生まれの男性は、公的な予防接種を受けたことがない世代であることから、積極的な協力が必要です。
 そこで厚生労働省では、当該世代の男性が風疹の抗体検査と予防接種を無料で受けられるクーポンの配布を平成31年度から3か年で実施し、令和3年度末までに抗体保有率を90%以上に引き上げる目標を掲げていますが、昨年10月24日までの同省の調査によると、受検者数は約920万人の見込みに対して約337万人、ワクチン接種者数も約190万人の見込みに対して約71万人にとどまっていることが判明しています。
 生まれてくる赤ちゃんを先天性風疹症候群から守り、安心して子どもを生み育てられる大府市とするためにも、抗体保有率の低い世代の男性にに対する一層の啓発を求めました。

 健康未来部担当部長の答弁では、クーポン未使用者への再勧奨を繰り返し行っていたことが分かった一方、抗体検査受検率は令和2年度末で23.6%にとどまっていたことも判明しました。
 そこで、妊娠中のお母さんを通じた当該世代の配偶者男性への啓発や、これから孫が生まれる50代以上の男性も含まれる点を踏まえ、「おおぶ祖父母手帳『まごまご』」などを活用した周知を再質問で提案したところ、今後はパートナーにも積極的に勧奨を行うこと、それ以外の家族にも通知文書等を工夫して周知していくことが答弁されました。

 最後、感染症やワクチンに関するデマや陰謀論については、執行部と現状認識の共有を図る目的で質問しました。
 冷静に考えれば荒唐無稽とすら見受けられる内容のデマまでもが、権力によって隠ぺいされた不都合な真実であるかのような陰謀論とともに喧伝、拡散され、そういった情報に触れたことで不安を感じ、あるいは本気で信じてしまった人の中には、マスクの正しい着用等の適切な感染対策をやめてしまったり、ワクチン接種を躊躇したり、または周囲に接種をやめるよう説得したりといった事例が、我々の実際の生活圏の範囲においても少なからず見聞きされている現状です。
 新型コロナワクチンについて、自らのリスク判断から接種を選択しない、あるいは医学上の事由により接種できないといった人が、時間の経過とともに社会の中でマイノリティーとなった今、打たない人、打てない人が差別に苦しめられるようなことは絶対にあってはならない一方で、弱い立場にある未成年の子どもなどが、デマを信じる家族によってワクチンを打ちたいという意思を抑圧されるといった状況も、同様にあってはならないと訴えました。

  健康未来部担当部長は答弁の中で、ネット上の様々な情報を元にコロナワクチンは危険であると訴え、接種の中止を求める御意見が本市に対してもあったことを明かしたうえで、感染症対策条例の改正や市民の判断材料となる正確な情報提供等、これまでの取組に言及しました。
 宮下はこれに対し、人が集まって組織や社会が構成されることで起こる現象として、構成する人々のうち2割は賛成、6割はどちらでもない、そして、残りの2割が反対になるとする「2対6対2の法則」を引用し、ここから考えられるポイントの一つとして、中間の6割の人たちに安全性をきちんと納得していただくために、どう安心なのかを正確な情報とともに分かりやすく発信することが極めて大事であるという点を、意見として改めて強調しました。