働きやすさは暮らしやすさ ~職住近接のまちづくりという戦略の重要性

大府市の立地を東京に置き換えてみる

かつて、大府市と信州を仕事で行き来する生活を続けた2年ほどの間、このまちのかけがえのない魅力、可能性にたくさん気づくことができました。

日本を代表する3大都市の一角をなす名古屋市に隣接し、都心まで5~10分間隔の電車でわずか15分圏内という近さは、中心駅を新宿に例えれば吉祥寺、渋谷なら武蔵小杉に匹敵する驚異的な利便性です。これだけ便利な立地でありながら、ほんの少し駅を離れるだけで緑豊かな丘陵地帯とのどかな田園風景が出迎えてくれる…そんな “都市の顔” と “田舎の情緒” の調和こそが、大府市が持つオーブ(宝)のまさに中核なのだと思います。

でも、このまちの可能性はこんなものじゃないはずです。大府の潜在的な力をもっともっと掘り下げていくことで、このまちに暮らす市民みんなの未来はさらに明るいものにできると考えています。

 

企業立地でも優等生の大府市だからこそ

名古屋のお隣という優位な条件もあって、外からの目線では「ベッドタウン」のイメージをどうしても持たれがちな大府市ですが、昼夜人口比率を調べてみたら何とほぼ1:1。これは、市内の企業で働く市外在住者が、名古屋など市外への通勤者とほぼ等しいことを意味します。

このまちが企業立地でも立派な優等生である証ですが、これからも企業誘致を促進し、雇用確保と職住近接の環境を整えていくことは、若い世代にとって働きやすさと暮らしやすさが両立する魅力的なまちづくりに欠かせません。いわば「時間のゆとりは暮らしのゆとり」―自宅と職場の近さは、暮らしにも確実にゆとりを生み出してくれるからです。

その上で、共働き家庭がむしろ一般的な家族像となりつつある今、多様化した働き方にも政治は目を向けなければなりません。夜勤や交代勤務、パートや非正規で働く人にも安心の保育メニューを充実させることは、現役世代にとって未来(結婚や育児など)に希望が持てる、“働きやすさと暮らしやすさが結びついた” まちづくりにつながります。“時間にゆとりある職住近接のまち” を実現するには企業誘致の方法論だけでなく、“働く人に寄りそう視点” も決して忘れてはならないのです。

 

企業誘致の優位性を底上げする交通インフラの整備

もちろん、企業進出にはさまざまな要素が絡みます。しかし、行政の力ではどうにもならない地理的な条件を除けば、スムーズな物流を担保する交通インフラの実現、適正な土地政策、優遇措置による競争力の底上げなど、市の行政が政策として実行できることは少なくありません。

例えば、既存のインターチェンジにつながる接続道路の改善、スマートインターの新規整備など、高速道路へのアクセス向上は企業立地条件の優位性に直接的な影響を与えるだけでなく、近隣から周辺地区へ、市全体へと波紋のように広がっていく多面的な恩恵も計り知れないものがあります。

伊勢湾岸道などにアクセスする各動線の道路状況改善はもちろんのこと、大府PAのスマートインター整備も高速道路へ向かう交通量を分散させることで市内企業立地条件を底上げし、観光面でも大きなプラスが期待できるでしょう。

都市計画道路の整備率に目を向けてみても、残念ながら近隣市と比べて極めて低いと言わざるを得ません。都市計画道路の整備を進めて市全体の動線を改善していくこともまた、スムーズな物流という誘致条件に大きく貢献するはずです。

 

実はシビアで重要な土地政策

企業誘致促進する手法を考える上で、最もシビアで重要なのが土地政策です。手の打ち方次第でまちの未来を活かしも殺しもする、ということがよく分かる事例が実は富山県にあります。

「日本一面積が小さい村」として知られる富山県の舟橋村は、かつて広域都市計画の土地政策によって危うく消滅寸前までいった村です。富山市と高岡市を中心とする県の広域都市計画で全域が市街化調整区域の指定を受け、住宅整備などの開発行為が厳しく制限されたために、同村の人口は減少の一途をたどりました。

「このままでは村がなくなってしまう」という強い危機感を持った村は県に陳情を続け、20年近くかけて指定解除にこぎつけたことで人口がようやくV字回復。富山市のベッドタウンとしての潜在的な需要はもともと大きかったこともあって、見事に消滅の危機を回避することができたのでした。

 

シムシティのようにはいかないけれど

無論、土地政策は地主さんの意向もありますし、農業に関する諸法令や環境保護のための開発条件なども絡んでくるため、「このへんは工場!こっちに商業地!ここは住宅地!」と、ゲームのシムシティのように簡単にはいきませんし、先述したように選択次第でまちの未来を生かしも殺しもするシビアなものなので、そうおいそれとは変えられない仕組みにもなっています。

一方で、例えば後継者不足による耕作地減少が懸念される農地については、農地中間管理機構と連携した集約化、大規模化が地理的優位性の高い都市近郊農業における農業法人の誘致には不可欠ですし、商工業分野の産業誘致にしても立地を促進する業種あるいは地域を条例で定めるだけでなく、このまちに進出することの立地メリットをさらに底上げするために何ができるか、市全体の適正な土地利用のあり方を常に点検しながら、必要な土地の確保にどうつなげていくかをワンセットで考えていくことが、何より肝要となってくるのです。

 

より豊かでゆとりある暮らしのために

まち全体の “適業適地” を考慮しながら、土地利用のあり方をたゆまず改善し続けることで、さまざまな産業を誘致していく余地は市内にまだまだ存在します。

繰り返しになりますが、市街地周辺地区を活性化させていく意味でも、高速道路や大型幹線道路への物流動線改善などを通じて、このまちで働ける場所をさらに増やしていくこと。あわせて、働く人の目線に立った暮らしやすい環境づくり。この2つを “車の両輪” として共に進めていくことこそが、大府の持続可能な未来につながっていくのだと考えています。